日本原子力学会和文論文誌
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写実体ファントムを用いた脳表面の熱中性子束分布測定の再現性
山本 和喜熊田 博明山本 哲哉松村 明
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2004 年 3 巻 2 号 p. 193-199

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抄録
放射線医療においては,病巣に治療必要線量を投与し,正常な組織には可能な限り被曝線量を低減することが必要となるため,事前にコンピュータ支援による治療計画システムを用いて照射計画を組み,その計画に忠実な照射を行うことが重要となる。一方,生体内での詳細な線量モニタリングがほとんど不可能なため,人体に対する放射線の影響を定量的かつ客観的に評価することを目的に,人体組織および形状特性を再現したファントムが用いられており,計算シミュレーションの検証およびビームの性能確認に利用されている。中性子線を用いるホウ素中性子捕捉療法(BNCT: Boron Neutron Capture Therapy)においても,中性子散乱能を等価とするために水素密度を合わせた材料で幾何学形状のファントムが作られており,線量分布測定,細胞生存率測定などに用いられている。最近の臨床試験側の関心は,医療照射後定期的に撮影しているMRI(Magnetic Resonance Imaging)等から判断する被照射部位の健全性について,治療効果と各線量値とを比較し,耐用線量および治療線量を決定していくことにある。幾何学形状のファントムでは臨床上の要求を満たすものではなく,中性子ビーム経路に存在する吸収散乱の大きい障害物の影響,境界面での中性子の挙動などを忠実に再現できる線量評価方法が必要とされている。これらを補うため,我々は計算シミュレーションによる線量評価ができる線量評価システム(JCDS: JAERI Computational Dosi-metry System)を開発しており,これと並行して忠実に形状を再現した写実体ファントムを用いた実験的手法による線量評価について検討している。
人の頭部の形状に忠実な写実体ファントム(以下,頭部モデルファントムと呼ぶ)の製作を可能とする技術として,CT (Computed Tomography)等の断層写真から忠実な立体造形が可能な光造形技術(Rapid PrototypingTechnique)を応用することとした。医学面における光造形技術は,MRIやCTスキャンで得られた断層データをもとに患部の標本(レプリカ)の作成にすでに応用されており,腫瘍や骨の異常,その他の病気の確実な診断方法や難しい外科手術の手順検討に利用されている。放射線治療の分野に限ると個人の線量分布の測定を目的とした写実体ファントム製作の報告はなく,眼窩の小線源治療の線量分布を計画どおり実施するためのバイオモデルの製作や,陽子線治療のフィルタの製作が報告されているにすぎない。
以上の観点より,本研究では,日本原子力研究所のJRR-4 (Japan Research Reactor No. 4)で,治療を受けた患者1名の頭部を対象に光造形技術を応用して,頭部モデルファントムを製作することにより,製作技術における課題および製作誤差を確認するとともに,当該患者の医療照射条件を同ファントムで再現し,脳表面線量分布の測定の可能性について検討を行った。
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© by the Atomic Energy Society of Japan
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