大気環境学会誌
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原著
東アジア域のNOx 排出量の経年変化と窒素化合物の挙動のモデル解析
鵜野 伊津志板橋 秀一弓本 桂也入江 仁士黒川 純一大原 利眞
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2013 年 48 巻 5 号 p. 223-233

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抄録

2000 年から2012 年までの東アジア域の窒素酸化物質NOx の排出量の増加トレンドをGEOS Chem 化学輸送モデル、4つの環境監視衛星からのNO2カラム濃度計測、最新のアジア域大気汚染物質排出データベースREAS Ver. 2.1 を用いて調べた。モデル計算は全球格子(2˚×2.5˚)にアジア域高解像度格子 (0.5 ˚×0.667˚) をネストし、NO2の大気中の寿命に関わる化学反応過程を修正して行った。衛星計測によるCEC NO2の対流圏カラム濃度は2000 – 2005 年に年率で 10%で増加していた。REAS Ver 2.1 を利用したGEOS Chem モデル解析は2000 2008 年の変動傾向をよく再現していた。窒素酸化物間の組成の季節変動とNOx 排出量の関係を解析し、NO2カラム濃度とNOx 排出量の間に高い線形関係が確認され、衛星から計測できるNO2カラム濃度がNOx 排出量のよいインデックスになることを示した。この結果をもとに、衛星計測の結果から2009 年以降のNOx 排出量を逆推定する回帰式を示した。全窒素化合物のCEC 領域の収支解析を行った。暖候期にはCEC で排出されたNOx 60% 強がCEC 領域内に乾性•湿性沈着で除去されるが、寒候期には域外への水平輸送の寄与が約2/3 に達することを示した。

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© 2013 社団法人 大気環境学会
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