大気環境学会誌
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総説
霧と露の化学とその環境影響に関する研究
井川 学
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キーワード: Acid fog, Dew, Forest decline, Mt. Oyama, Fir, Beech
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2015 年 50 巻 2 号 p. 59-66

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抄録
大気環境学会学術賞を頂いた我々のこれまでの霧や露に関する研究の概要を、ここにまとめて報告する。我々はアクティブおよびパッシブの霧採取装置を用いて丹沢大山をフィールドに研究を行ってきた。その結果、大山では主に硝酸を原因とする酸性霧の発生頻度が高いことが明らかになった。霧の特性はイベントごとに濃度や時間変動が大きく異なる。そこで、霧の特性に影響する大気汚染、標高や気象条件について明らかにした。また、霧と同様な微量湿性沈着物である露についても都市部の横浜をフィールドに、その特性の支配因子を明らかにした。山間部で発生する酸性霧は、樹冠への沈着量が極めて大きく、霧の発生する地点では立ち枯れが多く見られている。そこで、丹沢で枯れが顕著なモミやブナの稚樹を育て、疑似酸性霧の暴露実験を行い、葉のワックス層への浸食から始まる酸性霧の樹木への直接影響が確認された。また、オゾンの曝露実験も行い、酸性霧と高濃度オゾンとは相加的に影響することを明らかにした。現在は世界中で高濃度の汚染物質を含む霧や露が観測されているが、本来の霧や露は自然の恵みであり、その役割が果たされる環境を取り戻していきたいものである。
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© 2015 大気環境学会
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