2018 年 53 巻 4 号 p. 130-135
大気中のガス状NH3と粒子状NH4+濃度について、名古屋大学構内で20日間程度の連続観測を2011年11月から2016年1月にかけて7回行った。この中で、降雨後に湿度が低下すると同時にNH3濃度が高くなる現象がごくまれに観測された。本研究では、ピーク濃度が680 nmol/m3に達した2015年12月11日の短時間急増イベントについて、気象要素や雨水のイオン成分との関係も含めて、急増をもたらした要因を考察した。12月11日の雨水のイオン成分としては、海塩成分濃度やCa2+濃度が高く、pHは5.6程度であった。このため、水分の蒸発により雨水中のNH4+が揮発可能な条件であった。同時に、12月10日夜から11日朝にかけての暖気の流入により、建物の外側の壁面などに露が形成される気象条件であった。しかも、露が形成される際に大気中NH3濃度が高かったので、高NH4+濃度の露が形成されていたと考えられる。降雨後の湿度低下に伴う水分の蒸発時に、これらの雨水や露からNH3が揮発したために、大気中NH3濃度が急上昇したと考えられる。