大気環境学会誌
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研究論文(ノート)
デニューダ・緩和渦集積法を用いたフラックス観測による東京郊外の森林におけるPM2.5硝酸塩および硝酸ガスの沈着速度
坂本 泰一中原 聡仁高橋 章反町 篤行堅田 元喜松田 和秀
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2018 年 53 巻 4 号 p. 136-143

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抄録

アジア地域における反応性窒素の乾性沈着量推計の精度向上のため、当該地域で特に知見の少ない森林沈着面への粒子状およびガス状硝酸成分の沈着速度の直接測定を実施した。緩和渦集積 (REA) 法の捕集部にデニューダ法を導入し、PM2.5窒素成分をアーティファクトの影響なく測定でき、かつ、PM2.5中のSO42-およびNO3、並びにHNO3ガスの同時フラックス測定が可能なシステムを構築し、沈着速度の測定精度を向上させた。2016年10月14日から12月14日にかけて、東京郊外の森林において観測を実施した。観測期間中の沈着速度の代表値は、SO42-は0.80 cm/s、NO3は1.4 cm/s、HNO3は1.9 cm/sと推計された。沈着速度および林上から林内への濃度減衰率から、NO3およびHNO3の両成分は、SO42-よりも効率よく森林へ沈着し除去されていることが明らかとなった。樹冠上部では、日射を直接受け温度が上昇した葉面近傍で、NH4NO3がHNO3にガス化して効率よく沈着することにより、SO42-に比べてNO3の沈着速度が大きくなったと考えられた。このような温度上昇がない林内では、NO3に比べHNO3の濃度減衰率が大きく、NH4NO3の揮発が抑制されることによるHNO3の供給低下とHNO3の沈着による除去の両者の影響を受けた結果である可能性が示唆された。

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© 2018 大気環境学会
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