大気環境学会誌
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総説
二次大気汚染物質の動態解明に関する研究
速水 洋
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2020 年 55 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

1990年代に入ると、バックグラウンドオゾンに代わりに酸性雨(酸性物質)が関心を集めた。硫黄化合物の広域輸送を予測・評価するために、トラジェクトリー型モデルとオイラー型モデルを組み合わせたハイブリッド型モデルを開発し、近傍発生源の影響が大きい地点における予測精度を改善した。東アジアを対象とした広域輸送モデルの相互比較試験(MICS-Asia)のフェーズIとIIに参画し、モデル間の相違とその要因を明らかにした。東京都狛江市においてガス状・粒子状物質の連続観測を実施し、各成分の実態を把握した。また、硝酸塩のガス・粒子分配の季節変動が多成分系の熱力学平衡モデルによりほぼ再現されたことから、粒子は内部混合状態にあると推測した。さらに、MM5/CMAQにより首都圏内の排出抑制が二次生成無機粒子の濃度低減にある程度有効なことを示すとともに、地域や季節により応答が異なることを明らかにした。韓国済州島の粒子組成を熱力学平衡モデルにより解析し、東アジアのNOxとアンモニアの増大により同島で微小粒子態の硝酸アンモニウムが増えると予測した。福江島では、ダストの前に非海塩起源硫酸塩が濃度上昇する事例を捕らえるとともに、そのなかに三宅島火山ガス由来のものが含まれることを明らかにした。

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© 2020 大気環境学会
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