大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
研究論文(原著論文)
サイクロン法で採取された粒子状物質中CrのXAFSによる化学状態解析
齋藤 克知 奥田 知明長谷川 就一西田 千春原 圭一郎林 政彦
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 55 巻 2 号 p. 27-33

詳細
抄録

大気粒子状物質は、生体に入り込むことで人体への有害性が懸念される。この大気粒子の生体への有害性評価のためには、粒子全体の質量のみならず成分組成の相違に着目することが必要不可欠である。本研究では、価数によって有害性の異なるCrに着目し、微小粒子と粗大粒子をフィルター法とサイクロン法で採取し、大気粒子中Crの化学状態を、X線吸収微細構造 (X-ray Absorption Fine Structure: XAFS) 分光法にて解析した。大気粒子は2017年の4季節において、神奈川、埼玉および福岡の3地点で採取し、大気粒子中CrおよびCr標準試料のXAFSスペクトルの測定を行った。これらのスペクトルに対して線形合成解析を行うことで、Crの各価数の割合を算出した。XAFSスペクトル測定の結果、フィルター試料中Crから得られたスペクトルはノイズが大きくなった。一方で、サイクロン法で採取した大気粒子中Crから得られたスペクトルはノイズが小さくなったため、このスペクトルを解析に用いた。解析の結果、大気粒子中Crの化学状態は、試料採取地点や粒径により異なっていたが、ほぼすべての大気粒子中Crの主成分は3価Crであった。また、微小粒子の方が粗大粒子よりも3価Crの割合が大きかった。さらに、微小粒子、粗大粒子ともに3価Crの割合が福岡、神奈川、埼玉の順に大きく、特に福岡では3価Crの割合は他の2地点よりも15%以上大きかった。さらに、有害性の強い6価Crが一部の粗大粒子から検出された。

著者関連情報
© 2020 大気環境学会
次の記事
feedback
Top