大気環境学会誌
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研究論文(原著論文)
森林における大気汚染物質の輸送におよぼす遮蔽による流体力学的効果の解析
市川 陽一 露木 敬允薦田 直人宮元 健太廣畑 智也中園 真衣関 光一毛利 英明守永 武史
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2020 年 55 巻 2 号 p. 50-59

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抄録

グリーンインフラは大気汚染の緩和策の一つとして注目されている。森林による大気質の改善について、樹木への沈着や樹木の吸着の観点からの研究は多い。しかし、大気汚染物質の輸送におよぼす樹木の流体力学的効果については、これまで沿道の大気汚染緩和に着目され、森林を対象とした研究事例はほとんどない。そこで本研究では森林を対象に風洞実験によって流体力学的効果を解析した。実験に用いた樹木模型の空隙率を防風林の抗力を考慮した流体力学計算結果 (Wang and Takle, 1997) から評価するとおよそ30%であった。樹木密度が小さな森林では、トレーサガスの濃度は森林の風上から風下にかけて減少した。一方、樹木密度が大きい森林では森林の中央でトレーサガスの濃度が最小となった。樹木密度が大きいと、森林の風下で渦領域ができ、森林の風上と風下の両方からトレーサガスが森林に流入するためと考えられる。樹冠を通した物質交換は樹木密度が小さいほうが大きかった。

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© 2020 大気環境学会
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