大気環境学会誌
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研究論文(原著論文)
気象モデル推定値を取り入れたLand Use Regressionモデルによる国内大気汚染物質濃度分布推定
辻本 昌礼 山本 浩平亀田 貴之
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2022 年 57 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

Land Use Regression(LUR)モデルは、大気汚染物質による健康影響の評価において用いられている。本研究では、大気汚染物質濃度が気象条件に大きく影響を受けることを踏まえ、日本国内を対象とし、気象モデル推定値を取り入れたLURモデルを作成し大気汚染物質の空間濃度分布を推定することを目的とした。この目的のために、気象モデルWRFを用いて詳細な気象場の空間分布を求めてLURモデルの説明変数候補とし、PM2.5およびNO2の月平均分布の推定を行った。回帰モデルの構築にはRegression Kriging法およびSupport-Vector-Regression(SVR)法の2手法を用いた。作成されたLURモデルにおいて、すべての月でWRFにより推定された気象場に関する説明変数が高い重要度を持って選択された。また、PM2.5およびNO2ともに決定係数が0.7程度と気象場を全く考慮しないモデルと比較して高精度の濃度分布が得られた。また、回帰手法の違いによる推定精度への影響は、NO2について顕著であり、SVR法にによって推定精度の向上が認められたが、PM2.5についてはSVR法が有効であるとはいえなかった。そのため、新たな説明変数の追加や新たな説明変数の追加などによって、より高精度の推定が可能になれば機械学習手法を用いたLURモデルの構築の長所がより明確になると考えられる。

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© 2022 公益社団法人大気環境学会
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