大気環境学会誌
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研究論文(ノート)
ヒト呼吸器由来培養細胞を用いた硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウムの気相ばく露実験
大久保 智子 角田 德子五十嵐 剛大貫 文齋藤 育江小林 乗時牧 倫郎高橋 佳代子木下 輝昭猪又 明子
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2025 年 60 巻 5 号 p. 67-75

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抄録

PM2.5などに含まれる硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウムの生体影響を調べるため、ヒト呼吸器由来培養細胞を用いて気相ばく露実験を行った。ばく露濃度は、1、10、100 mg/m3の低、中、高濃度群および対照群、ばく露時間は1、2、3時間である。ヒト肺胞上皮由来A549細胞へのばく露実験の結果、硫酸アンモニウムでは酸化ストレスマーカー ヘムオキシゲナーゼ-1、還元型グルタチオン(GSH)が対照群に比べ中濃度群もしくは高濃度群で2倍程度増加した。ヒト気管支上皮由来Calu-3細胞へのばく露実験の結果、硫酸アンモニウムでは、炎症マーカー インターロイキン(IL)-8は低濃度群で減少、中濃度群で増加、IL-6は中濃度群で増加、高濃度群で減少、GSHは高濃度群で増加した。硫酸水素アンモニウムでは、A549細胞、Calu-3細胞ともに、全ての測定項目で影響はなかった。硫酸アンモニウムの気相ばく露実験で炎症を起こす可能性が示唆されたが、高濃度群のばく露濃度は、一般大気中硫酸アンモニウム平均濃度の約50,000倍の濃度である。今回、2種の培養細胞を用いて硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウムの気相ばく露実験を行った結果、大気濃度レベルでの培養細胞への影響は極めて少ないと考えられる。

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