抄録
石炭, 石炭灰および大気粉塵中のテルルを分析し, その大気中における挙動と環境試料中の濃度レベルを同族元素のセレンと比較した。テルルは地殻および土壌に対する濃縮係数が高く, 粒度分布においては微小粒子側に多く存在する。またテルルは石炭中に選択的に含有され, 石油中には定量されていないことから, 石炭燃焼由来の元素であると考えられ, Se/Teモル比の検討から石炭燃焼排出物のトレーサーとなる可能性が見出された。横浜市と冬期に暖房燃料として石炭消費量が増加する韓国ソウル市における大気中テルル濃度と, それぞれの都市の石炭消費量の間には相関が見られた。現在石炭は世界的レベルで石油とほぼ同量の需要のあるエネルギー源である。特に東アジア地域においては, 石炭需要の急速な増大が今後見込まれており, それに伴う大気汚染に対するモニタリングには, テルルは有用な元素であると考えられる。