大気環境学会誌
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遠隔地および下部対流圏における大気中Peroxyacyl nitrates類の観測調査手法の開発
渡辺 征夫中西 基晴前田 恒昭畠山 史郎
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1996 年 31 巻 5 号 p. 213-223

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抄録

Peroxyacyl nitrates類 (PANs) は, 反応性の窒素化合物の重要なリザーバーとして注目されており, 全球的な環境分布の解明が重要な課題となっている。そこで, PANsの主要な構成成分であるPeroxyacetyl nitrate (PAN) とPeroxypropionyl nitrate (PPN) を対象として, 離島など遠隔地の地上調査あるいは対流圏内の航空機調査に適した低濃度試料の濃縮採取・分析法を検討し, 電源の必要ない簡易な試料採取法, 24時間連続的に試料採取するための装置, 航空機用の軽量で高精度の試料採取装置, それに熱的に不安定なPANsのための粒状ドライアイスを利用した保存・運搬法などを開発, 考案した。これらの手法や装置を用いて, これまで, 対馬, 隠岐, 屋久島, 佐渡などの離島, あるいは東シナ海, 黄海, 対馬沖から男鹿半島に至る日本海などの上空においてPANsの地上あるいは航空機観測を行い, 離島で約330, 航空機により約200の試料を採取して分析した結果, 各観測の平均値の幅は, PAN;0.1-0.4ppb (V/V), PPN;0.01-0.03ppbと, 欧米の遠隔地域と比較して幾分高いことを認めた。

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