抄録
目的:スポーツをすることの健康効果についてはよく知られているが,スポーツ観戦と健康の関連についてはよくわかっていない。我々は,スポーツ観戦と20種類の健康・ウェルビーイングに関するアウトカムとの関連性を縦断的に検討した。
方法:明治安田ライフスタイル研究に参加した成人6327人(勤労者4851人)の3 時点コホートデータを用いて因果関係を推定した。2018年に,メディアまたは現地でのスポーツ観戦頻度を自記式質問票で評価した。2019年に,健康行動指標,身体的指標,精神的指標,仕事関連指標などのアウトカムを評価した。2017年における社会人口学的因子,スポーツ観戦頻度,アウトカム指標を評価し,共変量として用いた。各アウトカム変数に対応する3 種類の統計モデル(ロジスティック回帰,修正ポアソン回帰,線形回帰)を用いて解析した。
結果:メディアでのスポーツ観戦頻度が多い人ほど,身体活動不足や朝食欠食になるリスクが低く,幸福感が高かった(トレンド検定 P < 0.05)。その一方で,高BMI,高血圧や糖尿病になるリスクは高かった(トレンド検定 P < 0.05)。また,現地でのスポーツ観戦頻度が多い人ほど,生活習慣の改善に対して無関心になるリスクが低く,心理的高ストレス状態や脂質異常症になるリスクが低かった(トレンド検定 P < 0.05)。
結論:スポーツ観戦と心代謝性疾患の間で好ましくない関連が認められたことについては慎重な解釈や更なる研究が必要であるが,本研究結果はスポーツ観戦が健康的な生活習慣の獲得や精神的なウェルビーイングを向上させるための新しい修正可能な因子となり得ることを示唆している。