体力研究
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  • 藤井 悠也, 北濃 成樹, 甲斐 裕子, 神藤 隆志, 荒尾 孝
    2024 年 122 巻 p. 1-16
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/13
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    背景:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により,勤労者の身体活動(physical activity: PA)が減少し,座位行動(sedentary behavior: SB)が増加した可能性がある。しかし,これまでのほとんどの研究では,PAとSBは自己申告により評価されていた。そこで本研究は,日本人勤労者におけるCOVID-19発生前後のPAおよびSBの変化について加速度計を用いて明らかにすることを目的とした。
    方法:本研究は,首都圏在住勤労者の健康診断データを用いた1年間の縦断研究である。ベースライン調査は2019年6月から11月,追跡調査は2020年6月から11月に実施された。どちらの調査でも,参加者は少なくとも10日間,起きている時間に3軸加速度計を腰に装着するよう求められた。分析にあたり,装着時間の変動を考慮し,PAとSBに費やした時間(分)を装着時間に占める割合(%)に換算した。COVID-19発生前後のPAとSBの変化を調べるために,対応のあるt検定を実施した。
    結果:参加者757人のうち,536人(70.8%)を分析対象とした。分析対象者の平均年齢は53.3歳,女性が69.6%,ほとんどが正社員であった。解析の結果,PAは,平日および週末に関係なく減少したが,週末の変化量は少なかった。一方で,SBは平日・週末ともに有意に増加した。これらPAの減少もしくはSBの増加は,1日当たり約10分程度であった。
    結論:首都圏在住勤労者において,COVID-19の発生後,客観的に測定されたPAは減少し,SBは増加した。そして,その効果量は1日当たり約10分程度であることが明らかになった。
  • 神藤 隆志, 北濃 成樹, 永田 康喜, 中原(権藤) 雄一, 鈴川 一宏, 永松 俊哉
    2024 年 122 巻 p. 17-27
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/13
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    学校運動部と早期離脱との関係については,これまで十分に明らかにされていない。本研究の目的は,福岡県の私立男子高等学校の運動部における早期離脱の関連要因を明らかにすることとした。1年生928名のうち,同校の運動部に所属する331名を本研究の対象とした。2017年5月にベースライン調査を実施し,2019年10月に追跡調査を実施した。本研究では,早期離脱を3年生の4月よりも早く運動部を辞めた生徒と定義した。早期離脱の関連要因として,生物学的要因,個人内要因,個人間要因,組織的要因を検討した。早期離脱を目的変数,検討した関連要因を説明変数とする単変量ロジスティック回帰分析を用い,オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。全体で232名(85.0%)が3年生の4月以降も運動部への参加を継続し,41名(15.0%)が早期離脱を経験した。早期離脱との統計学的に有意な関連は,体重(OR = 0.94,95% CI = 0.90-0.98),BMI(OR = 0.84,95% CI = 0.74-0.97),傷害や障害の経験(OR = 0.40,95%CI = 0.19-0.87),競技戦績(OR = 0.29,95% CI = 0.13-0.62),スポーツ経験期間(OR = 0.99,95% CI = 0.98-1.00)であった。この結果から,生徒の学校関係者や家族は早期離脱の可能性を認識し,生徒が早期離脱を経験した場合には適切なサポートを提供すべきであることが示唆される。学校の運動部活動の競技レベルや規範は,学校や運動部によって異なる可能性があるため,今回の知見が他の学校や運動部に当てはまるかどうか検証する必要がある。
  • 兵頭 和樹, 北濃 成樹, 上野 愛子, 山口 大輔, 渡邊 裕也, 野田 隆行, 西田 純世, 甲斐 裕子, 荒尾 孝
    2024 年 122 巻 p. 28-45
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/13
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    目的:先行研究では,高齢者における身体活動(physical activity: PA)と実行機能との正の関連が示唆されている。しかし,これまでの研究は,1日の時間の使い方やPAの蓄積パターンを十分に考慮していなかった。そこで本研究では,地域在住の高齢者において,日常のPA,座位行動(sedentary behavior: SB),睡眠の相互作用を考慮しながら,PAの強度や蓄積パターンと実行機能(抑制制御,ワーキングメモリ,認知的柔軟性)との関連を検討することを目的とした。
    方法:本横断研究は,2021年から2022年にかけて実施された,認知機能に対する運動の効果に関するランダム化比較試験のベースラインデータを用いた。76人の地域在住高齢者のデータを解析に用いた。PAとSBに費やした時間は加速度計を用いて評価し,睡眠時間は自己申告とした。実行機能の評価として,ストループ課題(抑制制御),N-back課題(ワーキングメモリ),タスクスイッチング課題(認知的柔軟性)を実施した。PAと実行機能の関連性の検討および行動時間の仮想的な置き換えに対する実行機能の変化量の推定には,さまざまな潜在的交絡因子を考慮したcompositional multiple linear regressionとcompositional isotemporal substitution をそれぞれ実施した。
    結果:残りの行動時間と比較して低強度PA(light intensity PA: LPA)の時間が長いほど,ストループ課題の成績が良好であった。更に,この関連は,散発的なLPAよりも10分以上続くLPAのほうが強かった。更に,30分 /日のSBまたは睡眠をLPAに仮想的に置き換えることは,ストループ課題の良好な成績と関連した(約5~10%の向上に相当)。一方,中高強度PAの時間と各実行機能課題成績との有意な関連性はみられなかった。
    結論:LPAは抑制制御と正の関連があり,この関連性は散発的なLPAよりも継続的なLPAにおいて強かった。更に,SBまたは睡眠時間を減らし,LPA,特に継続的なLPAの時間を増やすことは,後期高齢者における抑制制御を適切に管理するための重要な対策となりうる。今後大規模な縦断的研究や介入研究により,これらの関連性を確認し,その因果関係や背景にあるメカニズムを明らかにすることが求められる。
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