抄録
要旨:術中胆道損傷後の良性胆道狭窄は,憂慮すべき合併症であり,治療に難渋する事が多い.当科で経験した34例を対象に治療法を検討した.他施設損傷例は33例(97.1%)であり,17例(50.0%)が既に何らかの修復を受けていた.当科での治療内容としては,手術例が31例(91.2%)を占めた.平均観察期間は8年11カ月,予後良好28例(82.3%),再狭窄3例(8.8%),難治性胆管炎,死亡例が各々1例(2.9%)であった.治療内容は胆管空腸吻合15例,胆管胆管吻合7例,胆管十二指腸吻合,胆管十二指腸間空腸間置が3例,結紮糸除去,クリップ除去,腹腔ドレナージ術が各々1例,非手術例は3例であった.胆管空腸吻合はBismuth III型以上,多次手術症例が多かった.胆管胆管吻合はBismuth II型が多く全例予後良好であった.術中胆道損傷後の胆管狭窄では,難治例が多く積極的な外科的治療が良好な予後につながり,適切な症例選択によっては,胆管胆管吻合による修復も有用である.