抄録
要旨:症例は72歳,男性.貧血精査目的の腹部超音波検査で胆嚢内腫瘤を認め当科受診した.各種画像診断で肝浸潤,胆嚢近傍への肝転移及び胆嚢管リンパ節転移を伴う胆嚢癌と診断し,胆嚢摘出及び肝S4a・S5切除,胆管切除再建・リンパ節郭清(D2)術を施行した.病理組織学的に腫瘍は腺管構造を示さずシート状に胆嚢粘膜下に広く増殖していた.腫瘍細胞はN/C比が高く,顆粒状・大小不同のクロマチンが増量し,異型性の強い核を有していた.免疫組織学的にAE1/AE3陽性,CD56陽性,Chromogranin A弱陽性,Ki-67指数は62.5%であった.以上より胆嚢原発内分泌細胞癌と診断した.術後6カ月残肝転移を認め,術後17カ月で死亡した.腺癌成分を含まない胆嚢原発内分泌細胞癌は非常に稀で早期に他臓器転移をきたす予後不良な疾患であり文献的考察をふまえて報告する.