抄録
肝十二指腸間膜内の門脈,胆管,肝動脈の全構造が変位し,かつ右側肝円索を有する非常に稀な解剖学的変異を有する胆石胆嚢炎症例を経験したので,その手術手技上の工夫と若干の文献的考察を加え報告する.症例は63歳,女性.腹部造影CT上,肝十二指腸間膜内の門脈,胆管,肝動脈の全てが十二指腸腹側を走行し,その中で門脈が最も腹側に位置していた.その背側を総胆管が,さらに背側を固有肝動脈が走行していた.胆嚢床は肝内側区域に位置していた.手術は腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.肝円索を牽引挙上することで視野を確保し,肝円索の左側と臍左側にポートを挿入し,牽引方向を自在にすることで,安全に手術を遂行できた.門脈,総胆管および肝動脈それぞれが十二指腸腹側を通る異常については発生過程からも説明できるが,それぞれが同時に起こることは考えにくく,その機序についての考察は今後の課題である.