症例は38歳男性.祖父に胃癌,叔父に胃癌と食道癌を認めた.全身倦怠感,食欲低下,皮膚黄染を主訴に前医に入院した.ERCPで遠位胆管に全周性狭窄を認め,精査目的に当院へ転院となった.胆管狭窄に関しては複数回の生検でも悪性所見を得られず,一方,下部消化管内視鏡検査で全大腸炎型潰瘍性大腸炎を認め,直腸Rbの0-Is病変からの生検の結果はGroup5(tub2)であった.大腸の治療を優先する方針となり,腹腔鏡補助下大腸全摘術(直腸切断型),回腸人工肛門造設術を施行した.術後,胆管生検を再度行ったところ腺癌が強く疑われ,膵頭十二指腸切除術を施行した.本邦では潰瘍性大腸炎へのPSCの合併や,PSCへの胆管癌の合併はそれぞれ数%ずつ報告されている.PSCを合併していない潰瘍性大腸炎の症例で,大腸癌と胆管癌を合併した若年成人例の報告は認められず,自験例は極めて稀であり,文献的考察を含め報告する.