1999 年 13 巻 1 号 p. 51-54
高度胆管奇形と膵・胆管合流異常を合併した,きわめて稀な1例を経験したので報告した.症例は41歳男性.上腹部痛を契機にERCPにて胆管,膵管系の異常が発見された.総胆管は左右の肝管に至る前に2分岐し,太い一方に胆嚢管が合流し,胆嚢管の近傍に短く筆尖状に途絶する管状構造が認められた.また,木村分類I型(膵管合流型)の膵・胆管合流異常も合併しており,胆摘術,肝外胆管切除術,胆管空腸吻合術が行われた.術中所見より,筆尖状の管状構造は未発達の左副肝管と判明した.ERCPを参照すると,副肝管は胆嚢管とあたかも太い共通管を形成し,下方までのびており,久次の副肝管走向異常分類0型の鏡面対称型を成すものと考えられ,きわめて頻度の低いものである.一方,膵・胆管合流異常とは,発生学的にみて相互に関連性のない事象と考えられた.