1999 年 13 巻 4 号 p. 339-343
筆者らは,エストロゲン・レセプター(ER),プロゲステロン・レセプター(PgR)陽性の卵巣様間質を伴い,胆管拡張型胆管癌との鑑別を要した肝嚢胞腺腫の中年女性例を経験した,腫瘍は33×18cmで,線維性被膜に覆われた多房性嚢胞からなり肝の構造を逸脱して発育し,一部に壁在結節を伴っていた.腫瘍の実質は,高円柱状・粘液産生性の明るい細胞からなり,平坦,一部乳頭状に配列していた.それらは構造・細胞異型に乏しく,腺腫であった.嚢胞壁には紡錘形細胞の密な増生,いわゆる卵巣様間質がみられた.卵巣様間質はビメンチンにびまん性に陽性,デスミンに一部陽性で,線維芽細胞や平滑筋などへの分化能を保持した幼若な間葉系細胞と考えられた.またER,PgRともに陽性を示すことから,肝嚢胞腺腫はエストロゲンおよびプロゲステロンの影響下にあると推測された.p53は腫瘍細胞のみならず卵巣様間質にも陽性を示し,後者の腫瘍性性格もうかがわれた.