抄録
胆石症は消化器疾患の中でも最も頻度の高い疾患の一つであり,日本人の胆石保有率は人ロの高齢化とともに上昇している.胆石保有者数の増加は食生活習慣の変化,特に脂肪摂取量増加と繊維食摂取の減少による胆汁中コレステロール濃度の上昇に起因すると推定されている.また,胆石は女性に比較的多く,その成因として女性ホルモンの関与が推測されている.胆石は胆道に局在する結石であり,その構成成分と存在部位により,背景因子や生成機序が,臨床症状や重症度・治療の緊急性など臨床病態も多彩となる.胆石はその主要構成成分によりコレステロール結石と色素結石に大別され,両者の成因や形成過程も異なる.本稿では,その胆汁成分の肝・胆道における代謝異常とそれに基づく物性化学的変化や,胆道における運動生理機能異常を中心に胆石生成機序を解説する.