2007 年 21 巻 4 号 p. 522-526
症例は6 8 歳, 男性. 近医の腹部超音波検査( U S ) で胆嚢壁の肥厚を指摘され, 当院を受診した.USでは胆嚢は分節型腺筋腫症によって2房に分かれ,その頸部側には乳頭状腫瘤を多数認めた.底部側の粘膜面は平滑であった.MRCPでは膵胆管合流異常を認めなかった.早期胆嚢癌も否定できないことから胆嚢摘出術を行った.摘出標本で分節型胆嚢腺筋腫症を認めた.胆嚢内の胆汁アミラーゼ値は高値で潜在的膵液胆道内逆流現象が示唆された.病理学的には,腺筋腫症の頸部側には乳頭状の過形成を,また底部側には粘膜の剥脱を認め,残存した粘膜の一部に上皮内癌を認めた.本症例では,解剖学的膵胆管合流異常はないものの,分節型腺筋腫症と潜在的膵液胆道内逆流現象という2 つの発癌因子により, 腺筋腫症の底部側に癌が, また頸部側に著明な粘膜過形成が誘導されたと考えられた.