谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
レクチャー
4 尿中バイオマーカーの最近の動向と使用上の注意点
殿村 優上野 元伸鳥井 幹則
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2013 年 2013 巻 15 号 p. 31-40

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抄録

 古典的な臨床検査項目と比べて高い検出力を有するバイオマーカーの利用により診断精度や予後予測性の向上が期待され、近年の疾患及び創薬の研究において新規バイオマーカーの探索及び有用性の検証が精力的に進められている。医薬品開発に伴う毒性試験においても検出力の高いバイオマーカーは有用であり、有害事象の予測だけでなく開発候補化合物のスクリーニングや毒性のモニタリングに利用することができる。

 医薬品により惹起される毒性について、腎臓は主要な標的臓器の一つである。従来より汎用されている腎障害バイオマーカーとして、血中クレアチニン(plasma creatinine:Pcr)、糸球体濾過率(glomerular filtration rate:GFR)、尿素窒素(blood urea nitrogen:BUN) が挙げられる。しかし、腎障害に対するこれらの変動は軽微であり、軽度の腎障害では反応がみられない。また、組織や病態に対する特異性も十分ではないことが知られている。そのため、これらの既存マーカーを補完できる種々のバイオマーカー候補が探索され、その有用性が検討されてきた。本稿では、近年の腎障害バイオマーカーの研究の動向、及び尿中バイオマーカーの変動を評価する際に必要となる補正方法を説明し、最後に腎臓以外の臓器障害の尿中バイオマーカーに触れる。

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© 2013 安全性評価研究会
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