2016 年 2016 巻 18 号 p. 41-45
医薬品候補化合物に関しては、平成13年にICH S7Aとして安全性薬理ガイドラインが作成され、生命維持に必要な器官(中枢神経系、循環器系、呼吸系)の機能に対する影響を評価するために、安全性薬理コアバッテリー(中枢、循環、呼吸)試験のGLP下での実施が要求されるようになった。当ガイドラインにおける中枢神経系の安全性評価は少なくとも運動量、行動変化、協調性、感覚/運動反射反応、体温について検討するよう記載されており、検査方法の例としてFOB(functional observational battery)やIrwin法が取り上げられている。一方、毒性試験法ガイドラインには中枢神経系の安全性評価に特化した記載はなく、主には一般状態観察で明らかな行動異常を捉えることで中枢神経系の影響を予測する。最終的には他の器官・臓器と同様に病理組織学的検査で器質的な影響を捉えている。
このように毒性試験や安全性薬理試験のガイドラインは整備されてきたものの、中枢影響評価に関しては依然そのヒトへの外挿の難しさといった面で課題が残っている。本特集では株式会社LSIメディエンスの廣中直行先生が行動薬理評価のヒトへの外挿性について、またファイザーの堀井郁夫先生には現状の中枢神経系副作用予測方法、特にFOBの問題点と将来展望について独自の切り口で詳しく論じられている。ここでは、これら中枢神経系副作用の課題について簡単に触れた後、近年特に注目すべき痙攣毒性と薬物依存性について個人的な見解も含めて言及した。