抄録
日本製薬工業協会(Japan Pharmaceutical Manufacturers Association: JPMA)のタスクフォースチームが事務局となり2013年に設立した、“ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム(Consortium for Safety Assessment using Human iPS Cells: CSAHi)”では、数多くの製薬企業の研究者が集い、心臓と肝臓の2種類の臓器と中枢神経系1器官を対象として、健常人のiPS細胞からそれらの臓器や器官を構成する標的細胞に分化誘導された細胞材料を用いて、医薬品候補化合物のヒトでの安全性を予測する試験法開発の可能性が検討されてきた。なお、JPMAのタスクフォースチームの任務は2017年3月で完了し、2017年度からはCSAHiは参加企業により自主運営され、JPMAはオブザーバーの位置づけとなっている1-4)。対象臓器や器官としては、心臓・肝臓・神経の3チーム、機能としては、細胞性状解析・培養系検討の2チーム、計5チームに分かれて実験検証的共同研究をしている。筆者は、これらの活動をサポートする団体運営事務局として活動しているが、チームごとに受ける印象に特徴があり面白い。例えば、心臓チームは本当のひとつの会社組織集団なのではと思わせるほど組織だった連係プレーが得意であったり、肝臓チームは物事を見通す眼力を具えた賢人集団のようであったり、神経チームは戦法を駆使する野武士のようなたくましさを感じさせたりと、各チームそれぞれ、一様ではない。これらの印象は、各チームを牽引している方々の組織運営手法や参加メンバーの性格などに色づけられる部分もあるが、各領域に必要な既存リスク評価法の置かれた状況による影響が大きいと考えられる。いずれにしても、臓器や器官、あるいはそれら相互に関連して現れるリスク兆候を細胞レベルの応答で予測することに挑戦するわけで、細胞材料の質のみならず、適切な指標の選定から試験法の確立、測定機器開発状況や記録データ解析技術レベル、代替法の有無と新規方法論への要求水準設定など、あらゆる観点からの分析結果が、CSAHi各チームの目標設定と研究計画立案に影響を与え、チームカラーにも影響を及ぼしていたのである。