2009 年 16 巻 2 号 p. 133-140
我々の体には、食物に含まれる塩分を感知する味蕾のナトリウム(Na)センサーに加えて、体液のNaレベルを監視する脳内のNaセンサーが存在する。この両者が揃って機能することにより、適切な量の塩分を適切なタイミングで摂取することができている。しかしながら、脳内のNaレベルセンサーは存在こそ古くから提唱されていたものの、実体は全く解明されていなかった。筆者らは、このセンサーが脳室周囲器官のグリア細胞に発現するNaチャンネル、Na_xであることを明らかにし、塩分摂取行動の制御に重要な役割を果たしていることを示してきた。さらに、Naxによって感知された情報が、乳酸を介したグリア-ニューロン情報伝達により神経活動に変換される仕組みを解明し、脳内のNa感知機構を明らかにすることに成功した。