2009 年 16 巻 2 号 p. 171-178
本論文では、「共感覚」というタームを中心に「味とにおいの接点」について論じた。最初に、我々ヒトの食において、味とにおいは切っても切れない関係にあることを、筆者らの心理学・行動科学的な研究を中心に、現象論として例示した。次に、その背後にあると考えられる味覚と嗅覚の連合に関する脳機構について、ラットを用いた行動神経科学的な研究とヒトの非侵襲計測の結果を合わせて考察した。最後に、最近になって蓄積されつつある第一次感覚野での情報の統合が、味覚と嗅覚の連合でも生じている可能性について論じた。