抄録
本研究では学習・記憶障害やサルコペニアなどを呈する老化促進モデルマウス(SAM-P8)に対して、頭部の経穴である印堂穴(EX-HN3)と百会穴(GV20)に対する同時鍼刺激とタウリンの投与を行い、両者の併用が加齢に伴う脳機能障害を抑制する効果をローターロッド試験(運動機能)、新奇物体認識試験(認知機能)を用いて検証した。さらに、細胞内にタウリンを取り込むタウリントランスポーター(TauT)の脳内での発現をリアルタイム PCRおよび免疫組織化学染色で、血清中のエクソソーム量を ELISA 法により検討した。その結果、加齢による運動能力の低下の抑制がみられた。また、大脳の海馬と小脳におけるタウリントランスポーターの発現の増強、小脳でのプルキンエ細胞の減少の抑制がみられたことから、両者の併用が脳内のタウリントランスポーターの発現を増加させることにより、タウリンの様々な効果を増強させる可能性が示され、両者の併用が加齢に伴う脳機能障害の抑制に有効である可能性が示唆された。