2022 年 11 巻 3 号 p. 169-176
非血縁造血細胞ドナーにおける適合通知受け取り後の行動と関連する行動経済学的要因を探索する目的で,ソーシャルマーケティング手法を取り入れたインタビュー調査を行った。対象は調査時から過去1年以内に適合通知を受け取った調査時20歳-40歳の骨髄バンクドナーとした。幹細胞提供の重要性については,提供群および非提供群の提供意図の高いドナーにおいては「バンク登録時から適合したら提供すると決めていた」「自分しかいないなら」等,十分認識されており,身体的リスクについても発症頻度も理解したうえで強い懸念を示す発言は少なかった。一方,非提供群における提供意図の低いドナーは「末梢血幹細胞を選べるなら」「入院をしなくてもいいなら」等,提供群や提供意図の高い群と比較すると許容できる程度が異なることが伺われた。非提供群における提供意図の高いドナーはいずれも家庭生活や仕事の調整が困難であったことが終了理由となっていた。