2023 年 12 巻 3 号 p. 194-199
39歳男性。汎血球減少を契機に骨髄異形成症候群と診断された。Azacitidineにより完全寛解に到達し,非血縁者間骨髄移植を受けた。移植後day 4から抗菌薬不応の高熱および皮疹が出現したが,day 9から開始となったhydrocortisoneによって軽快した。この際にサイトメガロウイルス(cytomegarovirus,CMV)感染症の予防を目的としてfoscarnet(FCV)が開始となった。Day 23に全身性痙攣発作をきたしたため,FCVはヒトヘルペスウイルス-6B(human herpesvirus-6B,HHV-6B)脳炎に対する治療量へと増量された。同日に提出されたPCR検査結果は血漿ではHHV-6B DNA陰性で,脳脊髄液からのみHHV-6B DNAが検出されHHV-6B脳炎の診断が確定した。脳脊髄液のPCR陰性化が確認された後,FCVは合計3週間継続して終了となった。
FCV投与中にHHV-6B脳炎を合併した場合には血漿PCRが陰性化することがあり,血漿検体のみではHHV-6B脳炎を見落とすピットフォールに陥る可能性がある。