抄録
【目的】
前腕回内・外運動は近位・遠位橈尺関節で生じる運動である.臨床上,前腕回内・外可動域制限が,上肢の運動機能障害を惹起することは稀ではない.そのため,前腕回内・外可動域制限を厳密に測定することは重要になる.そこで我々は,第22回本学会において,移動軸を「手指を伸展した手掌面」とした従来の測定方法(従来法)に比べ,移動軸を「前腕遠位背側面で尺骨頭の近位部」とした測定方法(別法)は,純粋な近位・遠位橈尺関節の可動域を反映していることを報告した.しかし,その信頼性については検討していなかった.本研究の目的は,従来法・別法の信頼性について検討することである.
【対象および方法】
対象は本実験の目的を説明し,紙面上にて同意を得た健常成人男性15名(平均年齢21.8±2.81歳)の利き手15肢とした.測定は前腕回内・外可動域を他動運動にて,経験年数5年以上の理学療法士4名(検者A,B,C,D)が,全被験者に対して,従来法と別法を各3回ずつ行った.なお,代償運動を避けるため,椅坐位にて肘関節を90度屈曲し,上腕内側を側胸部に接した状態で測定した.統計学的手法には級内相関係数(ICC)と標準誤差(SEM)を用いた.検者内信頼性は各検者ごとに3回の測定値からICC(1,k)を用い,検者間信頼性は各検者の3回の測定結果から平均値を算出し,ICC(2,k)を用いて検討した.
【結果】
検者A のICC(1,k)とSEMはそれぞれ,従来法回内:0.98,2.78°,従来法回外:0.91,1.66°,別法回内:0.99,1.68°,別法回外:0.97,0.79°であった.検者Bでは従来法回内:0.99,5.64°,従来法回外:0.99,5.18°,別法回内:0.99,1.74°,別法回外:0.99,1.59°であった.検者Cでは従来法回内:0.99,2.53°,従来法回外:0.96,2.65°,別法回内:0.99,0.82°,別法回外:0.99,0.96°であった.検者Dでは従来方回内0.99,3.31°,従来法回外:0.96,1.86°,別法回内:0.99,1.63°,別法回外:0.99,0.65°であった. ICC(2,k)とSEMは各方法と運動方向でそれぞれ,従来法回内では0.72,4.13°,従来法回外では0.79,1.63°,別法回内では0.91,1.46°,別法回外では0.78,0.99°であった.
【考察】
従来法と別法は検者内信頼性,検者間信頼性ともに高い信頼性を認めた.このことから,両測定方法は臨床で使用するのに,十分高い信頼性があると考えられる.しかし,別法は従来法よりSEMが低値を示した.さらに,先行研究にて,別法は従来法より,純粋な近位・遠位橈尺関節の可動域を反映していることを報告している.ゆえに,前腕回内・外可動域測定は別法で実施する方が望ましい.