抄録
【目的】
我々は足底挿板の装着により症状の改善やパフォーマンスの向上する例を多く経験している。しかし、足底挿板装着が下肢関節運動に与える影響を客観化した報告は少ない。今回片脚スクワット動作にて足底挿板装着による各関節運動の変化を分析し、下肢ダイナミック・アライメント(以下DA)に与える影響を検討したので報告する。
【対象と方法】
対象は高校女子ハンドボール選手9名(年齢15.3±0.4歳、身長161.4±4.1cm、体重56.8±5.0kg:平均±SD)とした。
各対象に対して足底の形状に合わせて足底挿板を作成し、足底挿板なしと足底挿板装着の条件において左片脚スクワットを各5回3セット行わせ、前方と側方からデジタルビデオで撮影した。画像は、ダートフィッシュ(ダートフィッシュ・ジャパン社製)を用いて二次元分析を行い、各条件における次の角度を算出した。測定値は2セット目の5回施行のうち3回の値を採用した。
1.膝関節最大屈曲時の以下の角度
1)knee-in角:上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結んだ線と膝蓋骨中央と足関節中央を結んだ線のなす角度
2)股関節内転角:両上前腸骨棘を結んだ線の垂線と上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結んだ線のなす角度
3)体幹傾斜角:両肩峰を結んだ線と水平線のなす角度
2.膝関節屈曲5°ごとのknee-in角
【結果と考察】
knee-in角は、足底挿板装着により9名中5名に減少する傾向がみられた。3名は足底挿板装着によりknee-in角の明らかな減少・増加はみられなかったが、3回の測定値の差が減少した。1名については足底挿板装着によりknee-in角の増加がみられた。膝関節屈曲5°ごとのknee-in角の変化についても、足底挿板装着により測定値の差が減少した。股関節内転角、体幹傾斜角は、特に傾向はみられなかった。
今回の研究には機能的足底板(Functional orthotics insole:以下FOI)を使用して測定を行った。FOIは足部機能を考慮して対象者の足部形状に合わせて作成することにより、荷重時の足部動揺を軽減し、動作時の母趾球荷重を誘導する。それにより動作時に問題となるknee-in&toe-outやknee-out&toe-inなどのDAの改善を図る。
下肢DAは、体幹・股関節・膝関節・足関節・足部の機能やスタティック・アライメントなどに影響される。今回、足底挿板装着により股関節内転角や体幹傾斜角に特徴的な変化はみられなかったもののknee-in角の変化という下肢DAの変化が確認された。