抄録
【目的】
筋力強化は理学療法の中で多く用いられ,筋肥大は,筋力の増加に直接結びつくとされている.後藤らによると,筋細胞の肥大は,筋細胞内におけるタンパク質の合成増加およびサテライトセルの融合によると考えられている.しかし,温熱負荷による筋肥大の影響については動物実験による報告が多く,人体に対しての報告は少ない.そこで今回,成人男性を対象に温熱作用がある極超短波を用い,上腕周径計測値から温熱負荷の有無による筋肥大を行なう効率に差があるかについて検討したので報告する.
【対象】
対象は,測定肢に整形外科的・神経学的疾患の既往のない成人男生20名とし,実験の主旨を説明し同意を得たうえで測定・実験を実施した.対象者を温熱負荷群10名と非温熱負荷群10名に分け実験を行なった.
【方法】
本実験ではまず,上腕二頭筋の最大膨隆部の周径を計測した.筋力強化は,壁に背部を接地させた立位で,上腕を固定し代償を防ぎ肘関節屈曲運動を行なった.負荷強度を設定するため,金久らの方法を用い,1RMは8kgもしくは6kgの鉄アレイ(SAKAI製)を使用し,上肢の最高反復回数を測定,その後に1RMの70%を算出した.トレーニングは上記の負荷強度を測定した時と同様の肢位で,等張性に8回1セット,週3回行い,実験期間は6週間とした.また,負荷強度は毎週1回再測定し,設定し直した.温熱負荷群は極超短波機器(SAKAI製インバータパルスマイクロージョ MJI-800W)を使用し,上腕二頭筋の最大膨隆部に温熱負荷を加えた.振動周波数は2450MHz,照射時間は10分間とし,照射後に上記のトレーニングを行なった.各計測値の温熱負荷群,非温熱負荷群の平均値と標準偏差を求め,2群間を比較するためにt検定を使用した.有意水準は5%とした.
【結果】
温熱負荷群では初期26.6±2.20cm,最終26.8±2.22cm,初期と最終で0.02cmの増加があったが有意差は認められなかった.非温熱負荷群では初期27.0±2.50cm,最終27.3±2.47cm,初期と最終で0.03cmの増加があったが有意差は認められなかった.
【考察】
今回,本実験では両群ともに初期と最終で周径に有意差は認められなかった.非温熱負荷群における結果は,渡邉らに述べられている筋力強化において8回1セット,週3回,実験期間は6週間では,運動負荷が不十分であることが示唆された.また,温熱負荷による効率的な筋肥大ついて本実験では,極超短波の温熱負荷を用い,短時間で筋温を急速に上昇させた.後藤らによるラット用いた研究では,温熱負荷時間が長く設定している.今後,運動負荷を増した上で,より効果的な筋肥大を促すための温熱負荷の強さや時間,検討する必要があるのではないかと考える.