抄録
【はじめに】従来,臨床において筋力の評価測定にはMMT,HHD,CYBEXなどが用いられている.片麻痺を呈する脳血管障害患者(以下患者)を対象にこれらを用いて評価された筋力と動作能力に関する先行研究では,歩行能力においては非麻痺側下肢の筋力ではなく麻痺側下肢の筋力と相関があるとされている.しかし,これらの研究は下肢の求心性収縮力に対するものが多く,遠心性収縮力と比較したものは少ない.近年,パワリハの普及に伴い,老健や通所施設さらに病院などにもマシンが導入され筋力訓練に利用されるようになっている.これらのマシントレーニングの特徴は,負荷に錘を使用するため遠心性収縮力を必要とすることである.したがって,この特徴を利用することによって筋の遠心性収縮力を定量化し,評価,訓練に利用することが可能と考えられる.そこで,本研究では患者の求心性・遠心性の脚伸展収縮筋力と歩行能力との関係を明らかにし,さらに,装具との関係についても考察した.
【対象】対象は当院に入院し,課題の理解ができる,下肢に整形疾患を有していない,動作に影響のある疼痛を有していない,近位監視レベル以上で10m歩行及び,3分間歩行が可能であることを条件とした.
【方法】測定項目は,麻痺側下肢運動機能(SIAS),最大下肢伸展筋力体重比,10m歩行所要時間,3分間歩行速度,PCIとした.最大下肢伸展筋力体重比は,SAKAI社製ホリゾンタルレッグプレス(以下マシン)によって計測された最大下肢伸展筋力を体重で除した値とする.マシン設定は,股関節屈曲,膝関節屈曲を約90度,足関節背屈角度が約0度になるように調節し,代償を抑制するために骨盤ベルトを使用する.下肢装具を使用している場合は実際使用している装具を使用(除くLLB)する.得られた測定値から,SIAS,麻痺側、非麻痺側の最大下肢伸展筋力(求心性・遠心性)体重比, 10m歩行所要時間,3分間歩行速度,PCIの関係を考察した.
【結果と考察】筋力体重比においては装具なしが装具ありと比べ高値を示した.麻痺側遠心性最大下肢伸展筋力体重比は,麻痺側求心性最大下肢伸展筋力体重比,歩行速度,10m歩行所要時間と関係が深いことが分かった.以上のことより,非麻痺側下肢筋力ではなく,麻痺側下肢筋力が歩行に強く影響を与えることが考えられた.また,装具によって麻痺側筋力低下が補われていると思われた.今後は歩行速度のみではなく,FIMとの関係についても検討を加える必要があると考える.