抄録
【目的】<BR>脳卒中片麻痺患者の麻痺側の体幹側屈筋力は非麻痺側に比べ低下していたとの報告があるが,体幹筋は両側性神経支配であるため筋力の左右差は生じにくいと考えられる.したがってこの左右差は体幹筋の運動麻痺自体によるものではなく,股関節周囲筋の運動麻痺により骨盤の固定性が不十分となり,その結果,二次的に筋力を発揮できない状態にあるものと考えた.今回の研究の目的は,体幹筋力の左右差に対し骨盤の固定性および下肢の運動麻痺の程度が及ぼす影響について明らかにすることである.<BR>
【方法】<BR>対象は一側大脳半球障害による片麻痺で,端座位保持が可能な9例とした.平均年齢は74歳で,下肢Brunnstrom stageは4が4例,5が2例,6が3例であった.体幹側屈筋力は体幹を直立させた端座位から徒手筋力計を用い,上腕近位部にて麻痺側と非麻痺側方向へ体幹側屈を行わせた時の筋力を測定した.この際大腿部を固定した条件(大腿固定)と,これに骨盤の固定を加えた条件(骨盤固定)にて測定し,さらに非麻痺側に対する麻痺側の筋力比を算出した.下肢の運動麻痺の程度はStroke Impairment Assessment Setの股関節得点にて検査した.<BR>
【結果】<BR>大腿固定における体幹側屈筋力は麻痺側が8.0±3.5kg,非麻痺側が9.7±3.1kgと有意に麻痺側が低下していた.骨盤固定では麻痺側が8.1±3.1kg,非麻痺側が9.2±3.0kgであり,差を認めなかった.大腿固定における体幹側屈筋力の筋力比と股関節得点はr=0.84であり,有意な相関が認められた.<BR>
【考察】<BR>大腿固定では股関節周囲筋の運動麻痺により骨盤の固定性が不十分となり,麻痺側の体幹側屈筋群が働きにくくなり左右差が生じていると考えた.またその際,下肢の運動麻痺が重度な者ほど骨盤の固定性が不十分であるため左右差が大きくなるものと考えた.<BR>