抄録
【目的】
中枢神経系疾患における体幹機能障害は、坐位時の骨盤前後傾能力を観察することで確認可能である。健常者に比し、中枢神経系疾患患者は骨盤前後傾を自在に行うことができないケースが多い。そこで、中枢神経系疾患(脳卒中患者・脳性麻痺患者)と健常者での骨盤前後傾能力を客観的に捉えることを目的に調査を行った。
【方法】
対象者は、脳卒中患者10名(平均年齢65.5歳)、脳性麻痺患者10名(平均年齢13.0歳)、健常者10名(平均年齢32.0歳)、男女比3:2である。対象者はベッド上端坐位(膝関節90度屈曲位、足底接地)となり、自動的に骨盤を最大に前傾・後傾し、それぞれの肢位を側面よりデジタルカメラで撮影し、上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線と垂直軸とのなす角度を求めることで、基本矢状面での最大骨盤前傾・後傾角度を計測した。計測した角度を元に、前傾角度・後傾角度・前後傾角度の中点・前後傾の差の平均値を各々求め、健常者・脳卒中患者・脳性麻痺患者で比較を行った。尚、統計的検定にはt検定を用い、有意水準を5%以下とした。
【結果】
骨盤の前傾角度は健常者・脳卒中・脳性麻痺の順で角度が大きく、後傾角度は有意差が認められなかった。骨盤前後傾角度の中点は、健常者・脳卒中患者に比べ脳性麻痺患者の骨盤は後傾位にあった。骨盤前後傾角度の差では、脳卒中患者は健常者・脳性麻痺患者に比べ骨盤可動範囲に制限があった。
【考察】
脳性麻痺患者の骨盤は端坐位において後傾位にあり自動的に前傾を行うことが困難であることが示された。脳卒中患者においても健常人に比し前傾を行いにくいことが分かる。これは、体幹深層筋群の協調した運動が脳性麻痺患者・脳卒中患者において障害されていることを示すデータであると考えられる。今後は加齢による影響も考察できるよう、検討症例数を増やしていく予定である。