抄録
【目的】脳出血後の早期リハビリテーションは運動機能回復に有効であるとされているが、その作用メカニズムは不明な点が多い。そこで、運動機能回復メカニズムを解明するために、本研究では線条体出血モデルラットに対する早期リハビリテーション(トレッドミル走)が運動機能と脳組織に及ぼす影響を検討した。
【方法】深麻酔下にてWistar系雄性ラット(8週齢)の左線条体にコラゲナーゼ(Type IV)を注入し、脳出血モデルを作成した。脳出血後無作為に運動群、非運動群に分け、運動群にはトレッドミル運動(9 m/min、30分/日)を術後4~14日後まで実施した。運動機能評価にはBigioらによるMotor Deficit Score(MDS)テストを用いた。術後3日、7日および15日後に深麻酔下で灌流固定を行い、脳前額断面の凍結切片(40μm厚)を作成の上、H-E染色を施し、線条体残存体積及び大脳皮質の厚さを計測した。また、別の脳組織(術後15日)にGolgi-Cox染色を施した後、線条体及び大脳皮質(運動前野/補足運動野、一次運動野、一次感覚野)における神経細胞樹状突起の形態変化(長さ、分岐の複雑さ、スパインの密度)を解析した。なお本研究は名古屋大学医学部動物実験委員会の承認のもとで行った。
【結果】MDSテスト総合点では、運動群が非運動群に比べて有意な改善傾向を示した。線条体残存体積、大脳皮質の厚さは運動群と非運動群の間に有意な差は無かった。一方、線条体(非出血側)と大脳皮質運動前野/補足運動野(出血側)と一次運動野(出血側)での神経細胞樹状突起は運動群の方が非運動群に比べて長く、分岐もより複雑であった。さらに、大脳皮質一次感覚野(出血側)における運動群のスパインの密度は非運動群よりも有意に高かった。
【考察】脳出血後のトレッドミル走は運動機能の改善を促進することが示された。線条体残存体積、大脳皮質の厚さにはトレッドミル走による効果は認められなかったが、神経細胞樹状突起では形態変化が生じており、運動機能改善に関与している可能性が示唆された。