東海北陸理学療法学術大会誌
第25回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: C-10
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脳梗塞発症と同時に大腿骨頚部骨折を受傷した症例へのアプローチ経験
異常筋緊張に難渋した経験
*金子 正樹平 昇市奥佐 千恵笠原 知子川口 久美子宮守 祐樹浜田 秀剛
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抄録

【はじめに】本症例は脳梗塞と同時に大腿骨頚部骨折を受傷。初期に異常筋緊張増悪・仮骨性筋炎の発症を呈した。これらに対し治療方針を確立しアプローチした結果、仮骨性筋炎の所見は改善された。この経験に若干の考察を踏まえ以下に報告する。
【理学療法評価】
症例紹介:80代男性 診断名 脳梗塞・右大腿骨頚部骨折 障害名 右片麻痺・失語症
現病歴:左前頭葉、左頭頂葉内側に皮質性の小梗塞,左内頸動脈に狭窄が認められた。また発症時に転倒し、右大腿骨頚部骨折も確認されγネイルにて整復。
B.R.S.:上肢5 手指4 下肢4
感覚検査:麻痺側重度感覚鈍麻 JCS:2桁
筋緊張:安静時において全身の過緊張傾向が強く、特に、股関節屈曲・外転・外旋、膝関節屈曲、足関節底屈を強める。動作時にも患側下肢の異常筋緊張が特に強まり苦痛な表情となる。
【考察】本症例は、麻痺と大腿骨頚部骨折が同時期におこり身体イメージがより大きく崩れていたと考える。そのため安静・動作時ともに異常筋緊張がより増悪し、大腿骨頭は前方の組織に圧迫ストレスを加えたと考える。鳥巣らによると仮骨性筋炎に対しては安静が優先されるとある。本症例は常に異常筋緊張を起因とする不良肢位が維持され、大腿骨頭が腸腰筋を圧迫していたため一般的な安静の目的とする効果は得られないと判断した。そこで血流と不良肢位改善の2つに治療方針を確立し、安静ではなく運動によるアプローチを選択した。
【おわりに】今回、多くの要因が重なる症例に起こった仮骨性筋炎に対し、2つの治療方針を確立しアプローチしたことで屋内歩行自立に至った。この経験を生かし、今後は早期より血流と不良肢位の改善に治療方針を確立しアプローチを施行する事により、仮骨性筋炎の予防、より高いレベルでの歩行獲得に繋がると考える。

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© 2009 東海北陸理学療法学術大会
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