東海北陸理学療法学術大会誌
第25回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: S-4
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大腿骨距の3次元構造
~単純X線とマルチスライスCTを用いて~
*小松 真一山田 新悟工藤 慎太郎木全 健太郎太田 慶一浅本 憲中野 隆
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抄録

【目的】
 大腿骨距は,大腿骨頚部内側部の骨皮質から骨内部の海綿質に向かって垂直方向に突出する高密度の板状構造である.既に1870年代に報告されているにも関わらず,解剖学の成書における記載は少なく,その3次元構造は未だ明らかではない.今回,単純X線像とマルチスライスCT(以下,MSCT)像を撮影し,大腿骨距の3次元構造の解明を試みた.
【対象と方法】
 対象は,愛知医科大学医学部解剖学講座が所有する大腿骨(晒し骨標本)である.単純X線像は,KXO-50G(東芝製)を用いて正面像と側面像を撮影した.MSCT像は,Asteion(東芝製)を用いて,大腿骨頚部の長軸に対して平行および垂直な多断面再構成像(以下,平行MPR像および垂直MPR像)を撮影した.
【結果】
 単純X線側面像において,大腿骨頚部近位後面の骨皮質から小転子近傍の骨幹中央部に至る板状の高吸収域を認めた.正面像では,大腿骨距に相当する高吸収域は認めなかった.
 MSCT平行MPR像において,高吸収域の前端は小転子下縁の骨幹中央部で,後端は大腿骨頚部近位後内側の骨皮質であった.前端から後端まで続く板状構造を認め,その構造は大腿骨頚部内側が最も厚く,大転子に向かい徐々に薄くなっていた.垂直MPR像において,高吸収域の近位端は大腿骨頚部近位後内側の骨皮質で,遠位端は小転子下縁の骨幹中央部であった.高吸収域は,大腿骨頚部近位後内側の骨皮質から徐々に離れながら大転子の方向に広がり,遠位端に至る板状構造であった.その構造は大腿骨頚部後内側の骨皮質よりも厚く,骨幹中央近傍まで広がっていた.
【考察】
 単純X線側面像とMSCT像において,描出された板状の高吸収域が大腿骨距であると考えられた.特にMSCT像により,大腿骨距の前端から後端と近位端から遠位端までの構造および厚さが明瞭になった.MSCTは大腿骨距の3次元構造の理解に有用であると思われた.

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© 2009 東海北陸理学療法学術大会
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