抄録
【目的】固有受容器足底板(PE: Propriozeptive Einlagen)は,足底に分布する固有受容器を刺激し下肢の筋緊張を変化させることにより,歩行中の下肢の動きを矯正し,全身姿勢の安定化を図る包括的手法である.我々の施設では,PEを脳性麻痺や先天性内反足によるtoe-in gaitに応用している.しかし,その作用機序は不明であり,今後,治療成績を検証する必要がある.今回の研究目的は,PEの各バーを5パターンの組み合わせで健常成人に装着し,三次元歩行解析を用いて各パターンが歩行へ与える影響を明らかにした.
【方法】被験者は整形外科的疾患・神経学的疾患の既往のない健常人6名で,平均年齢24±5.6歳,平均身長175.4±7.0cm,平均体重68.2±13.0kgであった.計測には,三次元動作解析装置VICON MX(VICON社製)を用い,plug-in gaitに準じマーカーを貼付し解析を行った.被験者には,PEの内・外側ヒールバー,レトロバー,トゥーバー,ラストバーを組み合わせて,5パターンで装着し,各パターンの歩幅,ストライド長,歩行速度,膝関節,足関節の変化を計測した.被験者ごとに3回の計測を行い,平均値を求めて解析した.歩行速度は,self-control speedであったが,計測前に歩行路を歩かせケーデンスを計測した.そのケーデンスにメトロノームをセットし被験者はそれに合わせて歩行した.
【結果と考察】歩行速度は内側・外側ヒールバーを装着した場合に,84.8±7.3m/分で最大となり,PEから内側・外側ヒールバーをはずした場合,78.7±8.7m/分で最低となった.PEの装着の有無において比較した場合,PEなしで歩行速度が81.1±6.4m/分,PE装着で歩行速度が81.4±6.4m/分と変化はみられなかった.膝関節,足関節の最大可動域に変化はなかった.今回の結果から,PEの影響は内側ヒールバーと外側ヒールバーがもっとも歩行速度に影響与える因子であると考えられた.