抄録
【目的】
従来の片側のみで行う位置覚測定は,目標位置を記憶し再現するため記憶能力が影響する.そのため我々は,位置の記憶を必要としない肩関節位置覚測定法を試みた.今回の目的は,本法にて肩関節屈曲方向と外転方向での測定を行い,その妥当性について検討することである.
【方法】
対象は健常男性23名(平均年齢21.7±4.4歳,全例右利き)とした.対象者には研究の趣旨を伝え同意を得た.測定は端座位,閉眼にて行い,まず口頭で「肘を伸ばし腕が水平になるまで挙げて下さい.」と指示した.対象者には右肩関節屈曲運動と外転運動で水平と認識する位置をそれぞれ表現させた.測定角度は上腕骨長軸と床への垂線とのなす角度(以下,屈曲・外転角度)とし,デジタルカメラで撮影した後に計測した.屈曲・外転角度の測定は交互に各3回行い平均値を求めた.また,3回の測定値のうち最大値から最小値を引いた値を誤差範囲として算出した.検討は屈曲・外転角度について対応のあるt検定とピアソンの相関係数を求め,有意水準を5%未満とした.
【結果】
屈曲角度は100.1±4.8°,外転角度は98.5±5.2°で有意差が認められ(p=0.03),両方向に有意な相関関係が認められた(r=0.79,p<0.01).誤差範囲は屈曲3.9±2.7°,外転3.7±2.4°であった.
【考察】
我々は先行研究において,本法による肩関節外転方向の測定は信頼性が高く,小さな誤差での水平位置の表現が可能であったと報告した.今回の2方向の比較では,屈曲方向が外転方向よりも高い位置を水平と表現していた.これには筋や運動制御の違いが関与していると考えた.また2方向の間に高い相関を認め,いずれも誤差範囲に差が無いことは,運動方向が違っても個別に水平と認識する位置が決まっていることを示唆している.今後は肩関節障害例について測定し,本法の有用性についてさらに検討したい.