東海北陸理学療法学術大会誌
第25回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-43
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股関節伸展制限モデルにおける三次元歩行動作解析
骨盤前傾角度の変化について
*服部 良日石 智紀青木 隆明
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抄録

【目的】 股関節機能と骨盤・脊柱の関係については多くの報告がなされているが、定量的評価は静止時の単純X線撮影によるものが多く、歩行中の動態に対する定量的解析の報告は大変少ない。本研究の目的は股関節伸展制限による歩行時の骨盤前傾角度の変化を分析することである。 【方法】 20~30歳代の腰痛歴の無い健常男性10名を対象とした.対象者の右股関節にダイヤルロック継手付き股装具(トクダオルソテック,ヒッププロテクター2)を装着した。ダイヤルロックを外して股関節伸展制限のない状態(制限なしモデル)とダイヤルロックによる10度の股関節伸展制限を付けた状態(伸展制限モデル)それぞれについて床反力計(AMTI社)上で歩行を行った。歩行計測時、対象者には赤外線反射マーカーをPlug-in-gaitマーカーセットに準じて貼付し、解析には三次元動作解析システムVicon-612(Oxford Metrics社)を用いた。 【結果】 全歩行周期中、骨盤前傾角度が最大になるのは踵離地期(股関節最大伸展時)であった。最大骨盤前傾角度は制限なしモデルで13.2±4.8度、伸展制限モデルでは22.1±5.7度で伸展制限モデルの前傾角度が有意に増大した。 【考察】 1984年にMacnabらは股関節と骨盤・腰椎が隣接荷重関節として密接に関連し合いそれぞれの病態に影響を与えることに注目しHip-spine syndromeという病態概念を提唱した。臨床場面でも股関節の可動域改善に伴い腰部痛が軽減する症例を経験することがある。今回の研究により歩行時に骨盤前傾角度が最大になるのは踵離地期(股関節最大伸展時)であり、股関節の伸展制限モデルでは骨盤前傾角度が増大することが示された。このことは歩行動作の中で股関節の運動制限を骨盤傾斜により代償していると考えられ、股関節と骨盤の動的な影響を考える上での一考として示唆される。今後の課題として、骨盤から脊柱へとつながる影響の分析や、性別による代償方法の相違についても検討が必要であると考えられた。

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© 2009 東海北陸理学療法学術大会
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