抄録
【目的】下肢動脈の外科的血行再建術(LEBS)は、閉塞性動脈硬化症(ASO)患者の下肢機能の温存を目的に行われ、LEBS後の理学療法はその補助療法として位置づけられる。その対象者の中には入院が長期化する例も存在するが、入院長期化に影響を及ぼす因子は明らかにされていない。そこで今回我々は、LEBS後の入院長期化に影響を及ぼす背景因子と長期入院患者で確認された有害事象について検討したので報告する。
【方法】対象はASOにより2007年1月~2009年3月にLEBSを施行し理学療法を行った連続症例99名とした。術後在院日数が31日以上を長期入院とし、背景因子として年齢、脳血管疾患の既往、高脂血症の有無、下腿動脈への血行再建術(DB)、LEBSと同時にその他の外科手術(aggressive debridement や冠動脈血行再建術等)を行っている場合、術前歩行自立度の6項目を独立変数とし、長期入院の有無を従属変数として変数減少法によるロジスティック回帰分析を行った。また、治療経過における有害事象をカルテより後方視的に調査した。
【結果】入院中に死亡した4名を除く95名(男性65名、女性30名、平均年齢69歳)中、長期入院患者は33名だった。術後在院日数が30日を超える要因としては、脳血管疾患の既往(p=0.036)、DB(p=0.009)が抽出された。長期入院患者の治療経過における主な有害事象は潰瘍治癒遅延(68.6%)とADL低下(62.9%)だった。
【考察】脳血管疾患の既往とDBが抽出されたことは、長期入院患者において全身性に動脈硬化が及んでいることを示唆する。また、潰瘍治癒の遅延は活動量減少に伴う移動能力の低下を導くとも考えられ、潰瘍保護と同時にADL向上を図ることが理学療法実施上の課題と考えられた。