抄録
【目的】食物を飲み込む際は防御機能が働き息を止めるため,飲み込み動作と呼吸が一致しないと誤嚥する可能性が高い.今回の研究では,高齢者における飲み込み方法を検討するため,食物形態別に嚥下経過時間を健常な高齢者と成人にて比較し,呼吸への影響を酸素飽和度の変化でみた.
【対象】H.20年9月~H.21年3月に,本研究において目的・意義・有害事象等を十分に説明し承諾を受けた健常高齢者18名(男性4名,女性14名,年齢85.3±6.4(SD)歳)と成人健常者18名(男性5名,女性13名,年齢26.9±4.4(SD)歳)の合計36名を対象にした.尚,全例とも嚥下や呼吸に影響する疾患などはなく,コミュニケーションも特に問題は無い.
【方法】嚥下の条件により食物形態は,A群:常温水,B群:ゲル状の水(アクアジュレ),C群:お茶ゼリー,D群:ポテトペーストを使用した.それぞれ1回に小さじ1杯(約5ml)を噛まずに飲み込み計測をした.計測には呼吸状態と嚥下の状況を記録するため(アプノモニタmini)を使用.検定は高齢者と成人に分けスチューデントのt検定を用いた.
食物間の検定には分散分析(p<0.05)を用いた.
【結果】1:高齢者群の食物通過時間は,成人群に比べ食物形態が固形になるほど延長する傾向にあった.2:高齢者群の嚥下後のSpO2は成人群と比べて低下する結果であった.(安静時SpO2は両者間で差がない)
【考察】高齢者は飲み込み時間が成人に比べやや長い傾向にあり,SpO2の変化や回復時間に影響があると考えられる.呼吸の乱れは摂食にも影響すると考えられ,誤嚥のリスクがある場合には早期検査と予防の必要性があると考えられる.
【まとめ】高齢者は嚥下時の食物通過時間が長い傾向にあり,成人に比べSpO2の低下や回復が遅れる傾向にあった.したがって,高齢者における摂食時には十分な時間とタイミングを計る必要性を示唆した.障害者はさらに顕著な影響を示すものと考えられるため,今後障害者も対象に食物の咽頭経過時間と呼吸への影響について検討して行きたい.