抄録
【背景】近年、健康増進運動の1つとしてクロスカントリーで使用するポールを把持し、地面に突きながら歩行するポールウォーキング(PW)が注目されている。PWは同じ速度での通常歩行よりも運動強度が高くなり、効率の良い運動様式であると報告されている。しかし、対象者の至適運動強度を考慮したPWの身体に及ぼす影響について検討した報告は少ない。本研究では、効率の良い運動療法を構築する一環として、まず健常成人における至適運動強度下でのPWが呼吸循環応答に及ぼす影響について検討した。
【方法】対象は健常成人男性7名(28±3歳)とした。方法は、まずトレッドミル上にて症候限界性負荷試験(CPX)を実施し、後日、呼気ガス分析装置より得られた嫌気性代謝閾値(AT)の1分前の心拍数を目標とした運動強度にてPWおよび通常歩行を行った。PW、通常歩行は、運動開始から30秒毎に負荷を漸増させ、目標心拍数に達してから5分間実施した。測定項目は、PWおよび通常歩行時に酸素摂取量(V(dot)O2)、分時換気量(V(dot)E)を測定し、また、表面筋電図を用いて呼吸補助筋である胸鎖乳突筋の筋活動を測定した。V(dot)O2とV(dot)Eは各運動の終了前の30秒間、胸鎖乳突筋の筋活動は終了前の10秒間測定した。
【結果】通常歩行時のV(dot)O2およびV(dot)Eは平均15.8ml/kg/min、28.4l/min、PW時は16.6ml/kg/min、29.7l/minであり、PW時のV(dot)O2、V(dot)Eは通常歩行時と比較して高値を示した。胸鎖乳突筋の筋活動について、通常歩行時の筋活動量は141.0mVms、PW時では154.7mVmsであり、PW時の筋活動量は通常歩行時と比較して高値を示した。
【考察】AT強度の心拍数を目標にした運動においても、PWは通常歩行に比べて運動強度が高いことから、健常者だけでなく虚弱高齢者などにとって、効率の良い運動様式であると考えられる。