抄録
【目的】歩行などの有酸素運動は、認知症の予防や進行遅延に有効であると報告されている。その際、運動強度は低強度の運動でも脳機能向上に効果があるとされるが、中等度強度の運動後に有意に認知機能テストの成績が向上したとする報告もある。高齢者では低強度の運動の方が参加しやすいことから、低強度での運動が認知機能を改善するのか、また他の強度の運動と比較してどのくらいの効果があるのかを検証することは、認知症予防の観点から見て有用なものになるだろう。そこで、本研究ではその予備的研究として若年健常者に対し、異なる運動強度で行った1回の有酸素運動が認知機能の礎となる注意機能に及ぼす効果について比較・検討することとした。<BR>【方法】研究内容について説明し、同意の得られた健常人女性10名(21.0±1.1歳)を対象とした。運動負荷試験にて決定した低強度(30%peakV(dot)o2)と中等度(50%peakV(dot)o2)の運動を20分行い、その前後にPaced auditory serial addition task(PASAT)課題(1秒毎の数字の提示)およびModified Stroop Test(MST)を行った。各運動強度において運動前後の成績を対応のあるt検定を用いて比較した。有意水準は5%とした。<BR>【結果】PASAT課題では低強度の運動では、運動前後に有意な差がみられなかったが、中等度強度での運動では運動後に有意に点数が高かった。MST課題は2つの運動強度のどちらも運動前後に有意な差がみられなかった。<BR>【考察】PASAT課題では、成績の改善に慣れの影響が含まれる可能性を否定できないが、中等度強度の運動において運動効果が認められた。PASATおよびMSTはある認知活動を一過性に中断し、ほかの情報に反応することが求められる課題であり、より高次の注意機能を評価している。そのため、より高次の機能を高めるには低強度の運動では不十分であることが示唆された。<BR>