東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-061
会議情報

第1・2中足骨間に荷重時痛を訴えた一症例
*種田 智成
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
足部の機能は荷重する役割と地面に力を伝達し促進力を得る役割、そして地面から衝撃を和らげる役割がある。歩行などではこれらの機能が同時に行われる。臨床において足部の機能が破綻すると荷重時痛を呈する症例を経験することが多いが、その機能破綻の要因は多岐にわたり、さらに複数の要因が関連していることで正確な評価と治療が必要になる。今回、第1・2中足骨間での荷重痛を呈した症例に対し、足部アライメントを改善させたところ荷重痛が消失した。その後、運動療法と足底挿板療法を実施し良好な成績が得られたので若干の考察を加え報告する。
【症例紹介】
本症例は、テニス部所属の10代男性である。明らかな誘因なく右足の第1・2中足骨底間背側に荷重時痛を自覚し、その1週間後に当院整形外科を受診した。同日に理学療法を開始した。疼痛の出現条件は自由歩行、ランニング、片脚踵上げ、およびテニスでの切り返し動作時である。歩行観察では、対側足趾離地から対側初期接地の片脚支持期において内側縦アーチおよび横アーチの低下を認めた。荷重時の疼痛は右足の第1・2中足骨底間背側部のみであり、one point indicationで示すが、同部位に対する徒手的な疼痛の再現はできなかった。著明な筋力の低下はなかったが、足部内在筋はMMT4レベルであった。内側足根中足関節の伸展可動域は健側と比較して大きかった。その他の関節可動域に関しては足関節背屈20°底屈50°母趾MTP関節屈曲35°伸展60°IP関節屈曲60°伸展10°と著明な制限を認めなかった。後脛骨筋と短母趾屈筋は伸張位・弛緩位共に軽度の圧痛を認めたが、同筋に対する収縮時痛と伸張痛を認めなかった。フットプリントでは第_II_・_III_中足骨頭に圧集積を認め開張足傾向を示していた。
なお、本発表にあたり、患者への説明を行い、同意を得ている。
【治療内容】
足部のアーチ保持を目的として、攣縮筋に対するリラクセーションとテーピングを実施した。内側縦アーチの保持には、舟状骨から内果下方を通り足部の内側を引き上げるようにテーピングを貼付し、横アーチに対しては、底側から徒手的に足根中足関節を押し上げるように操作しながら貼付けた。テーピングを貼付けた状態での荷重痛は軽減した。初診時は、足部のアーチ保持筋である後脛骨筋と前脛骨筋、足部内在筋の筋収縮訓練を指導し、前述のテーピング方法も指導した。7日後に足底挿板を作成した。足底挿板は、テーピングでの症状改善をもとに舟状骨パッド、中足骨パッドを貼付した。足底挿板装着下での歩行時痛、片脚踵上げ時の荷重痛は消失した。その後は、足底挿板を装着した状態の足部と疼痛の評価を行い、18日後に疼痛の消失を確認し理学療法を終了とした。
【考察】
内側縦アーチは、足部における荷重と衝撃を吸収する主要な構造である。解剖学的な安定には、足底腱膜、内側足根中足関節の安定性、足部の外在筋・内在筋によって維持されている。また、横アーチは楔間関節と楔立方関節の複合体によって形成され、体重負荷に伴いわずかに下降し体重を分散する役割を持つ。
本症例の内側縦アーチについては荷重時の内側縦アーチの低下に伴い内側足根中足関節の過伸展によるメカニカルストレスが疼痛を誘発していると推察された。足底挿板によって内側縦アーチの保持を行うことで内側足根中足関節の破綻を改善し、荷重時痛は消失した。同様に横アーチの安定については楔間関節と楔立方関節を足底挿板によって保持することによってアライメントを是正した。また、林は中足骨横アーチ保持における足部内在筋が重要性について報告している。本症例において著明な筋力低下は認められなかったが、運動療法と足底挿板療法を実施し足部のアーチ低下に伴う足部内在筋の出力不全が改善され荷重時痛の消失に至ったものであると考える。
【まとめ】
歩行やランニング等の荷重ストレスに際し第1・2中足骨間に荷重時痛を訴えた症例を経験した。荷重時の足部アライメントは内側縦アーチ・横アーチの低下を認めていた。アーチの低下に対してテーピングを実施し、荷重時痛は軽減し、運動療法と足底挿板療法を併用することによって症状の消失に至った。今後は、足底挿板の介入による足部アーチ保持筋の筋活動についての研究を行っていきたい。

著者関連情報
© 2011 東海北陸理学療法学術大会
前の記事 次の記事
feedback
Top