東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-18
会議情報

人工膝関節置換術後に残存する屈曲拘縮に影響を与える因子の検討
*松浦 佑樹久保田 雅史高木 佑也吉岡 直美西前 亮基谷口 亜里沙高本 伸一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】 人工膝関節置換術(TKA)は、除痛、日常生活活動動作の改善に関しては良好な成績が報告されているが、術後関節可動域に関しては不良例も散見される。膝関節屈曲拘縮は歩行能力を低下させ、特にエネルギー効率の低下や膝関節伸展モーメントの増大に伴う膝関節前面部痛の出現に関与すると報告されている。さらに屈曲拘縮はインプラントの耐久性を低下させる可能性もあり、TKA後の膝関節屈曲拘縮の残存は重要な問題の一つである。TKA後の膝関節屈曲可動域に関連する因子は多くの報告があり、術前可動域、術前Femoral-tibial angle(FTA)、術前JOAスコアなどと関連があるとされている一方で、TKA後の膝関節屈曲拘縮と関連する因子を検索した報告は少ない。近年、高山ら(2010)が術後4週時での膝関節屈曲拘縮の残存には術前伸展可動域、術後脛骨コンポーネント設置角度が関与すると報告しているが、十分明らかにされてはいない。本研究では、TKA術後一年以上経過した症例に対し、膝関節屈曲拘縮の残存に関連する因子を検索することを目的とした。 【方法】 変形性膝関節症により初回TKAを施行し、術後一年以上経過してfollow-upを実施し得た20名24膝を対象とした。男性5例、女性15例、平均年齢79.2±7.9歳、平均術後follow-up期間は6.1±3.4年であった。外傷後変形や矯正骨切り術後の症例、最終follow-up時に独歩困難な症例は除外した。研究はRetrospective studyとし、カルテより下記の項目を情報収集した。評価項目は患者背景より年齢、性別、罹病期間、BMI(body mass index) 、術前及び最終follow-up時のJOA scoreとし、理学的評価として術前、術後2週時、最終follow-up時の膝関節伸展及び屈曲可動域を調査した。さらに単純X線画像所見より術前Kellgren-Lawrence分類、術前FTA、術前脛骨関節面後傾角度、最終follow-up時の脛骨コンポーネント設置角度及び術前・最終follow-up時の大腿脛骨間距離(単純X線側面像において大腿骨外側顆背面上部の彎曲頂点から大腿骨骨軸への垂線との交点と脛骨内側顆背面下部の彎曲頂点から脛骨骨軸への垂線との交点との距離)を測定した。インプラント挿入に関わらず同一定点間の距離を評価する目的で大腿脛骨間距離を測定し、術前と最終follow-up時の差を算出した。最終follow-up時に膝関節伸展可動域が-5度以上残存した症例を屈曲拘縮群、伸展可動域制限が残存しなかった症例を非屈曲拘縮群として上記の項目について比較検討した。統計はUnpaired t-testを用い、有意水準を5%とした。 【結果】 非屈曲拘縮群は16膝(平均年齢78.1±3.9歳、男性2膝、女性14膝)、屈曲拘縮群が8膝(平均年齢81.3±1.6歳、男性3膝、女性5膝)であった。罹病期間、BMI、術前FTA、最終follow-up時FTA、術前JOA、最終follow-up時JOAに関しては群間に有意差を認めなかった。術前伸展可動域は拘縮群が非拘縮群と比し有意に低下していたが、術前屈曲角度は群間で有意差を認めなかった。術後2週時の膝関節伸展角度は群間で有意差を認め、屈曲拘縮群の8膝中7膝は‐10度以上の伸展制限を有していた。術前脛骨関節面後傾角度及び最終follow-up時の脛骨コンポーネント設置角度は屈曲拘縮群が非屈曲拘縮群と比し有意に高値を示した。また、大腿脛骨間距離の術前後差は屈曲拘縮群が非屈曲拘縮群と比し有意に増大していた。 【考察】 本研究結果より、術前に屈曲拘縮が存在すること、術前後それぞれにおいて脛骨関節面の後傾角度が大きいこと、骨切りに対してコンポーネント厚が大きく大腿脛骨間距離が延長した症例には膝関節屈曲拘縮が残存しやすい可能性が示唆された。さらに、術後2週時に膝関節伸展角度が術後一年以上経過時の膝関節屈曲拘縮残存に影響を与えることが明らかとなり、術後の膝関節屈曲拘縮は早期に改善していくことが重要であると推察された。 【まとめ】 本研究ではTKA術後一年以上経過症例の膝関節屈曲拘縮の残存に関連する因子を検索した。術前の可動域や術後2週時の可動域、手術による脛骨コンポーネント設置角度、大腿脛骨距離の拡大が関連することが明らかとなった。
著者関連情報
© 2011 東海北陸理学療法学術大会
前の記事 次の記事
feedback
Top