抄録
【目的】
デイケアの目的は,急性期・回復期リハビリテーションで獲得された機能や能力の維持向上を図ることである.要支援者を対象とした先行研究では1年間のデイケア利用により下肢機能が向上し,Timed up & go test(以下TUG)の数値が有意に改善したとされている.当施設のデイケア利用者は要介護者が大部分を占めており,要介護者は要支援者よりも身体機能が増悪する可能性が高いとされている.そこで,本研究は要介護者を対象としデイケア利用開始時と1年後の身体機能の変化を調査した.
【方法】
対象は,当施設のデイケアを1年以上利用した要介護者30名.(男性12名,女性18名.年齢75.6±10.3歳).介護度の内訳は要介護1が10名,要介護2が16名,要介護3が4名であった.
対象疾患は,大腿骨近位部骨折,変形性膝関節症を罹患した運動器疾患群(以下運動器群)17名(年齢81.5±6.1歳)と脳卒中を呈した脳血管疾患群(以下脳血管群)13名(年齢68.0±9.2歳)である.
TUGは,podsiadloの方法に基づき当施設で作成したマニュアルを用い測定した.また,2回行った測定値の最小値を代表値とした.
測定結果は,変化率を用いて比較した.1年後測定値と初回測定値の差を初回値で割り, 算出した.変化率が負の値群(以下上昇群)と正の値群(以下下降群)に分類し,全対象,運動器群,脳血管群の各群での傾向を調査した.
【結果】
全対象では上昇群22名(73%),下降群8名(26%)であり,変化率の平均値は上昇群19%,下降群-15%であった.運動器群では上昇群15名(88%),下降群2名(12%)であり,変化率の平均値は上昇群19%,下降群-6%であった.また,脳血管群では上昇群7名(54%),下降群6名(46%)であり,変化率の平均値は上昇群19%,下降群-18%であった.
【考察】
本研究結果より要介護者であっても,全対象の73%に1年後のTUG変化率に上昇が認められ,各疾患それぞれに傾向の違いが認められた.
運動器群では,平均年齢が81.5歳であるが,上昇群の割合が88%と高く, TUG変化率も上昇傾向が認められた.また,下降群においては,変化率の平均値は-6%であり,脳血管群と比べて変動が小さかった.TUGは,動的バランス,虚弱高齢者の下肢機能を把握する評価尺度であり,この結果より運動器群では,要介護者でも急性期・回復期リハビリテーションを終えた状態から1年間デイケアを利用することによって,加齢や運動器疾患を有してもバランスや下肢機能の向上を図れることが示唆された.
しかし,脳血管群では,平均年齢が運動器群よりも68.0歳と低いが,上昇群54%,下降群46%と二分し,ばらつきが大きい傾向を認めた.また,下降群の変化率の平均値は-19%であり運動器群に比べ変動が大きかった.よって,脳血管群は,年齢が低くても運動器群に比べバランス,下肢機能が低下する傾向があると考えられる.先行研究によると脳卒中の既往を持つ者は,後遺症を持つ可能性が高く,在宅復帰後も活動範囲が自宅に留まりやすい.また,身体活動量の低下を誘発するとされている.脳血管群の身体機能低下防止を図るためにも,低下群の関連因子を環境や閉じこもりを加味して検討していく必要があると考えられる.今後は,継続してTUGを測定し,長期的にどのような変化があり,障害特性や環境因子など何が影響を及ぼすか,関連を分析していきたい.
【まとめ】
デイケアを1年間利用した要介護者の身体機能の変化を,初回利用時と1年後のTUGを比較し調査した.初回利用時と1年後のTUG測定値の変化率を算出し,全対象,運動器群,脳血管群それぞれを上昇群と下降群に分けその傾向をみた.全体的に上昇傾向が認められ,運動器群は年齢が高くてもバランス・下肢機能が向上する傾向があるが,脳血管群は年齢が低くても運動器群よりも低下する傾向あった.今後は,継続してTUGを測定し変化を観察し,障害特性や環境因子など何が影響を及ぼすか関連を分析していく必要がある.