東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-65
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一般口述
腫瘍用人工膝関節を用いた患肢温存手術の治療成績と課題
*岡田 史郎井上 善也中屋 早規神谷 万波青木 健太
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抄録

【目的】 近年、悪性骨腫瘍に対し患肢温存手術が積極的に行われ、より良い患肢機能が求められるようになった。今回、大腿骨遠位部と脛骨近位部に発生した悪性骨腫瘍に対し腫瘍広範切除術とHowmedica Modular Resection System(以下HMRS)人工膝関節を用いて患肢温存手術を行った症例の治療成績と課題を検討し報告する。
【方法】 当院整形外科で1994年~2012年までに膝周囲に発生した悪性骨腫瘍に対し、HMRS人工膝関節置換術を施行した14例のうち、調査可能な11例(大腿骨遠位部8例、脛骨近位部3例)を対象とした。年齢は14~77歳、平均42.5歳。原疾患は骨肉種7例、転移性骨腫瘍3例、悪性線維性組織球腫術後の転倒破損による再置換1例。術後経過観察期間は3ヵ月~7年4ヵ月で平均2年3ヵ月である。診療録から膝関節可動域(以下膝ROM)、大腿四頭筋筋力、患肢機能評価、合併症、ADLについて調査検討した。患肢機能評価は1989年にMusculoskeletal Tumor Society/International Society of Limb Salvageにより作成された機能評価を日本整形外科学会が日本語案として示したものを用いた。
【結果】 膝ROMは屈曲平均108度(60~130度)、伸展0度。大腿四頭筋筋力は徒手筋力検査で2~5、膝関節のextension lagを生じたのは3例で10~25度。機能評価は、疼痛89%、機能78%、支持性89%、歩行能力92%、歩容74%、全体85%。11例中10例が生存。合併症は、腓骨神経麻痺1例、感染疑い1例。ADLは、階段昇降を二足一段で行っている症例を6例認めた。
【考察】 患肢機能評価は諸家の報告では70~80%が多く、今回85%とほぼ同等であった。最大膝伸展位での保持能力は比較的良好だったが、特に階段昇降が制限されている症例は、膝屈曲位での膝制御に課題を認めた。HMRS人工膝関節の構造上、膝屈曲時に回転軸の後方移動が生じないため、大腿四頭筋のレバーアームが正常膝関節に比べ短く筋力を発揮しにくい。大腿骨遠位部例は大腿四頭筋の一部が切除される。脛骨近位部例は膝蓋腱の再建をするため、膝蓋腱付着部が瘢痕化するまで大腿四頭筋の収縮や伸張に配慮が必要となる。また、解剖学的な膝蓋腱付着部より近位になり大腿四頭筋のレバーアームが短く筋力発揮には不利になる。従って膝伸展機能低下は必発する。侵襲筋の強化とClosed kinetic chain(以下CKC)で膝を制御する運動パターンの学習が重要となる。CKCでの下腿三頭筋の下腿前傾を制御する作用と、ハムストリングス・大殿筋の股関節伸展の作用により、代償での膝伸展運動が可能となる。体幹前傾角度の増加に伴い、ハムストリングスの活動が増加するため、体幹と股関節の屈曲角度を考慮する必要がある。また、症例によって補装具よる動作獲得も検討する必要がある。
 膝ROMは平均108度と良好だが、不良例は化学療法後の倦怠感から活動意欲が低下した。転移性骨腫瘍の症例は「痛み=転移の痛み」と心理的な抑制が働き難渋した。リハビリ中断は機能回復の悪化要因となったため、活動意欲を維持できるよう多角的なサポートが重要である。
【まとめ】 患肢機能評価は85%で諸家と同等の結果だった。膝伸展機能低下による膝制御が課題で、侵襲筋の強化と新たな運動パターンの学習が重要である。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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